手廻しオルガン職人
長崎に行ってきた
古くからの手廻しオルガン職人のP.BOUWさんがいるところで
今よく訪れている函館の職人谷目基さんの師匠格にあたる方を一週間訪ねた
古い写真古い図面
次から次へと
おもちゃ箱の中からたからものをひとつずつ
これもあったと思い出すように
ぜんぶぜんぶ
清里の頃の
東京の頃の
長崎の頃の
すべての時間を
6日間で駆け上るように
みせてくれた
ところどころに現れるまだ学生のような雰囲気の頃の谷目さんの写真
「あれは12月31日だったと思います
車で送ってもらって握手して別れました」
東京で別れて長崎と函館にそれぞれに向かう
「長崎には希望に満ちてというわけではなかったんです
自動演奏楽器のことをよくしらない電気系の会社が
電気を使って制御しようとしたりしていて大変で・・・」
だれかがなんとかするしかないの役割だった。
その向かった長崎で勤めたオルゴール関係施設は
2009年に会社の倒産により閉館してしまう。
P.BOUWさんは今は、
オルガンを一台製作中で
修理の受注もうけているから、勤め人ではなく職人としては仕事している。
オルガンの歴史や自分の過去をはなしながら
ときどき谷目さんの話をするときのP.BOUWさんはとてもうれしそうで
P.BOUWさんのとこにきてるのに谷目さんの話を尋ねるのは恐縮だよなと
遠慮しているこちらの心構えさえものともしないほどだった。
「死ぬまでに一度会いたいなぁ」
冗談の響きじゃなかった。
会いに行けばいいのに
遠いからなぁ
電話くらいしたらいいのに
用事もないからなぁ
6泊する予定で来て
事前にいただいていたメールに
うちに泊まってもいいけど女性だからホテルをとられた方がいいかもしれません
とあって宿はとっていた
2泊たって「四泊目から泊めてほしい」と頼んだ
丸三日いっしょに過ごした。
最終日、午後1時にはこの家を発つ気でいた
11時に谷目さんの話がでたので一度電話してみる。
「かけてみましょうか?きっとつながらないと思うけど」ってことわってかけて
かける前に「かわらなくていいからね」っていわれた
谷目さんは日中つながりやすい人じゃない。
いつものように留守電。
やっぱりむりだよねと、このまま帰ろうと一度はおもった
家を出る直前にもう一度P.BOUWさん口から谷目さんの名前がでる
もしここにふたりがつながる運がそこにあるなら受話器を渡そう
とひとりで決めた
つながれ 繋がれ‥‥ つうじた
今までの経験でいうと二度目で彼が捕まるのはけっこうな奇跡で
谷目さんとわたし、すこしオルガンの話をする
にこにことP.BOUWさんこっちを見守っている
「実は今わたし長崎にいるんです」
「もしかして?」
ここまでの谷目さんの声は明るかった
「ほんとはかわるなっていわれてるんですけどかわります」
P.BOUWさんにとつぜん受話器をわたす。
もしもし
P.BOUWさんの唇が音にならずうごいた
受話器をもって隣の部屋に消えた。
追わなかった。
電話の前に吸い始めたばかりの
灰皿におかれた煙草の煙を一枚撮った。
しばらくたってやっと「もしもし」だけが声になって
うん
といったかいってないか
それだけだった
もどってきて受話器を渡されたので
話おわったのかと思わず終了ボタンを押したら時間が表示されて
もしかして私が切っちゃったかと
あわてて掛けなおす
話中かのような留守電にすぐつながる状態が二回
目の前に座りなおしたP.BOUWさんが声もなく涙をぬぐう
すこしおいてかけて5コール でない 短めにあきらめる
メールをかこうかとしていると折り返しが鳴る
「すみません・・・ P.BOUWさんのことを考えると涙がでてしまってことばにできない‥‥」
涙とわかる谷目さんの声をはじめてきいた。
奥からかろうじてだされたことば
つとめてうろたえずおちついて
「目の前のP.BOUWさんも同じ状況です
谷目さんにと、いろいろおあずかりしています
こんどもっていきます」
やさしくなるようにいいながらなにをどういっていいのか
これでよかったのか
二日たった今でもわからずに居る
さしでたことだ 承知の上で
ふたりのどっちからみても年下の女性で
ふたりともの知り合いで
手回しオルガンをふたりくらいだいすきな人じゃなきゃ
たぶんできない
P.BOUWさんのとこからの発信じゃなきゃとどかない
きっと谷目さんの前なら、かける前に止められる
P.BOUWさんのとこに次これるのなんていつの話かわからない
男性じゃきっと電話もできないふたりの気持ちがわかりすぎる
ただほんとは会いたい だけの部分を 抱えることなんかできない
やっていいのかわかんないけど
わたしだけだとおもった
こころだけずっとつながっている
もしふたりをすこしだけつなげるのなら
55歳の男性と45歳の男性を同時に一瞬で泣かせたことなんて
いままでにない
電話をきった。
ラジオはさだまさしが、
元気でいるか 町には なれたか 今度いつ帰る。
「なんでこんな曲なんだ。。。」つぶやくP.BOUWさんに
「でもこれいい曲です」返事は的を射れなかった
すこし静かにして、一緒に駅にむかった。
「これじゃ自分、きのさんと別れるのがつらくて泣いてるみたいだ」。
「声をきいただけでも五年ぶりです」
P.BOUWさんはゆるしてくれた
ひとりで汽車に乗って
かつてP.BOUWさんの勤めていたリゾート施設の前に立つ。
運河の上で私が泣くのはらくなこと。
この職業のすべてのいみのまえに、
ハウステンボスは陽気にうたってて
それはとても晴れた日で
--------------
そのあとのこと
http://aavenue.exblog.jp/17452445/
古くからの手廻しオルガン職人のP.BOUWさんがいるところで
今よく訪れている函館の職人谷目基さんの師匠格にあたる方を一週間訪ねた
古い写真古い図面
次から次へと
おもちゃ箱の中からたからものをひとつずつ
これもあったと思い出すように
ぜんぶぜんぶ
清里の頃の
東京の頃の
長崎の頃の
すべての時間を
6日間で駆け上るように
みせてくれた
ところどころに現れるまだ学生のような雰囲気の頃の谷目さんの写真
「あれは12月31日だったと思います
車で送ってもらって握手して別れました」
東京で別れて長崎と函館にそれぞれに向かう
「長崎には希望に満ちてというわけではなかったんです
自動演奏楽器のことをよくしらない電気系の会社が
電気を使って制御しようとしたりしていて大変で・・・」
だれかがなんとかするしかないの役割だった。
その向かった長崎で勤めたオルゴール関係施設は
2009年に会社の倒産により閉館してしまう。
P.BOUWさんは今は、
オルガンを一台製作中で
修理の受注もうけているから、勤め人ではなく職人としては仕事している。
オルガンの歴史や自分の過去をはなしながら
ときどき谷目さんの話をするときのP.BOUWさんはとてもうれしそうで
P.BOUWさんのとこにきてるのに谷目さんの話を尋ねるのは恐縮だよなと
遠慮しているこちらの心構えさえものともしないほどだった。
「死ぬまでに一度会いたいなぁ」
冗談の響きじゃなかった。
会いに行けばいいのに
遠いからなぁ
電話くらいしたらいいのに
用事もないからなぁ
6泊する予定で来て
事前にいただいていたメールに
うちに泊まってもいいけど女性だからホテルをとられた方がいいかもしれません
とあって宿はとっていた
2泊たって「四泊目から泊めてほしい」と頼んだ
丸三日いっしょに過ごした。
最終日、午後1時にはこの家を発つ気でいた
11時に谷目さんの話がでたので一度電話してみる。
「かけてみましょうか?きっとつながらないと思うけど」ってことわってかけて
かける前に「かわらなくていいからね」っていわれた
谷目さんは日中つながりやすい人じゃない。
いつものように留守電。
やっぱりむりだよねと、このまま帰ろうと一度はおもった
家を出る直前にもう一度P.BOUWさん口から谷目さんの名前がでる
もしここにふたりがつながる運がそこにあるなら受話器を渡そう
とひとりで決めた
つながれ 繋がれ‥‥ つうじた
今までの経験でいうと二度目で彼が捕まるのはけっこうな奇跡で
谷目さんとわたし、すこしオルガンの話をする
にこにことP.BOUWさんこっちを見守っている
「実は今わたし長崎にいるんです」
「もしかして?」
ここまでの谷目さんの声は明るかった
「ほんとはかわるなっていわれてるんですけどかわります」
P.BOUWさんにとつぜん受話器をわたす。
もしもし
P.BOUWさんの唇が音にならずうごいた
受話器をもって隣の部屋に消えた。
追わなかった。
電話の前に吸い始めたばかりの
灰皿におかれた煙草の煙を一枚撮った。
しばらくたってやっと「もしもし」だけが声になって
うん
といったかいってないか
それだけだった
もどってきて受話器を渡されたので
話おわったのかと思わず終了ボタンを押したら時間が表示されて
もしかして私が切っちゃったかと
あわてて掛けなおす
話中かのような留守電にすぐつながる状態が二回
目の前に座りなおしたP.BOUWさんが声もなく涙をぬぐう
すこしおいてかけて5コール でない 短めにあきらめる
メールをかこうかとしていると折り返しが鳴る
「すみません・・・ P.BOUWさんのことを考えると涙がでてしまってことばにできない‥‥」
涙とわかる谷目さんの声をはじめてきいた。
奥からかろうじてだされたことば
つとめてうろたえずおちついて
「目の前のP.BOUWさんも同じ状況です
谷目さんにと、いろいろおあずかりしています
こんどもっていきます」
やさしくなるようにいいながらなにをどういっていいのか
これでよかったのか
二日たった今でもわからずに居る
さしでたことだ 承知の上で
ふたりのどっちからみても年下の女性で
ふたりともの知り合いで
手回しオルガンをふたりくらいだいすきな人じゃなきゃ
たぶんできない
P.BOUWさんのとこからの発信じゃなきゃとどかない
きっと谷目さんの前なら、かける前に止められる
P.BOUWさんのとこに次これるのなんていつの話かわからない
男性じゃきっと電話もできないふたりの気持ちがわかりすぎる
ただほんとは会いたい だけの部分を 抱えることなんかできない
やっていいのかわかんないけど
わたしだけだとおもった
こころだけずっとつながっている
もしふたりをすこしだけつなげるのなら
55歳の男性と45歳の男性を同時に一瞬で泣かせたことなんて
いままでにない
電話をきった。
ラジオはさだまさしが、
元気でいるか 町には なれたか 今度いつ帰る。
「なんでこんな曲なんだ。。。」つぶやくP.BOUWさんに
「でもこれいい曲です」返事は的を射れなかった
すこし静かにして、一緒に駅にむかった。
「これじゃ自分、きのさんと別れるのがつらくて泣いてるみたいだ」。
「声をきいただけでも五年ぶりです」
P.BOUWさんはゆるしてくれた
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| 2012-04-08 01:42
| P.BOUWさん手廻しオルガン&長崎
カテゴリ
全体
手回しオルガンがくるよ♪
てまわしオルガンのこと
まちの人と
谷目基さんの木製オルガンと函館
谷目基さん手廻しオルガン製作記
函館と北海道-旅人以上住人未満
横浜とみなとのまち
P.BOUWさん手廻しオルガン&長崎
ギリヤーク尼ヶ崎
コラボレーション×KINO
ギリヤークさんの健康状態
突然社会学の時間
オルガンの町 Waldkirch
オルガネッタと
Pierre Charial
オルガンの作り手とその町
手回しオルガンのある場所
手廻しオルガンのある作品
手回しオルガンを弾くひと
オルガンロールを作ってみよう
オルガンブックを作ってみよう
オルガンのメンテナンスいろは
オルガン笛を作ってみよう
手回しオルガンの鳴る仕組
バレルオルガン治してみよう
コンサーティーナをなおそう
人形演劇について
ひとりごと
木のものと
くるくる回そう くるくる回想
北海道新幹線の始まりの日
北海道新幹線2 初めて走る日
北海道新幹線3 新幹線と会いたい冬
北海道新幹線4 ぴったり150日前ツアー
北海道新幹線5 新幹線と会いたい秋
北海道新幹線6 新幹線になりたい!?
北海道新幹線7 開業100日前
北陸新幹線一番列車で初往復
突然社会学の時間
未分類
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オルガンブックを作ってみよう
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オルガン笛を作ってみよう
手回しオルガンの鳴る仕組
バレルオルガン治してみよう
コンサーティーナをなおそう
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