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あと3人

大道芸の終わり
道にたつ今日の終わりを
どこまでにするか

時計をみて決めるときもあるけど
あと3人投げ銭くれる人が通ったら
とか
あと1人って思う日もあるけど

あと3人、にすることは多いかなぁ
ただ過ぎる人じゃなくて
何かを交わす人で数える

3人通るまでだと
もうひとつの時間がおこる

最初の1人が、親子連れ
赤ちゃんを抱えたお母さんとお父さん
ほんのちょっとだけ通り過ぎたあとすぐ止まって
お父さんだけもどってきた。
四角いおかねをくれる
居た甲斐ってうれしい

それから
通り過ぎてわりと行った後
やっぱりって思ったのか戻ってきてくれた人。
こういう人、ときどきいて
けっこううれしいのです。
通り過ぎたことも戻ってきてくれたことも知ってるから

3人目
この道にはめずらしく
ひとりで歩いている紳士。

すこしえがおとどけて
彼はすこし立ち止まって
気持ちくれたあと、行こうかなってしてから一呼吸
「もう一曲、きいていってもいい?」
うん
「なんか、ちがうの弾いてよ」
星に願いを

男の人は聴きながら
オルガンを見るでもなくて
ひとり運河の方の夜空を見ながら
何を思ってるんだろう。

とくに話したりせずに
ときどき風が彼の風景の先に向くときだけ
しゃぼんだま飛ばす

一曲終わってまだそのままでもう一曲
きっとこのくらいで最後かな、大きな古時計を最後、ゆっくりと。

その終止符に
「満月なんだな」
空に向けて彼が言って
「山でみると月、もっと綺麗なんだよ」
こちらを向く。
  山の生まれなんですか
「ううん。群馬。単身赴任で来てるんだ」
  群馬だとけっこうちがいますね
「ぜんぜん違うよ・・・」
  週末もどったりしないんですか
「帰ろうと思えば帰れるけど、、、
また戻ってこなきゃいけないから、帰らないようにしてる」

「いろんな人生があるよな」

深く言って
立ち去る背中にもう一曲届けながら

立ち止まってくれたときから
もっといえば近付いてきたときからたぶん
今日はあなたに会うための日だったと思った

そういう人にときどき出会う
二日に一回か三日に一回くらい

きっとおたがいなんでかことばでは言えない
でもこの音がひつようだった
ここで出会うことになってた

予告なく街にたっているときはいつも
こちらからは名乗らない。

私は誰かじゃなくていい
この音は町だったり、ただ記憶や時間であればいい。
もしもう一度会いたいと探すなら
『キノ』という形じゃなくて
それがなんだったのか
あなたの中のそうだったものをさがして

そう思って立ってる

帰りながら彼のことをもう一度思って
そのことのもうひとつの意味に気付いた。

私の前で夜空をみつめる彼の横顔は
人に見せる顔じゃなかった

語りかけた彼の言葉は
『私』に話したわけじゃない

じゃあ固有名詞じゃない私に話かけられてゆくのはなんなのか

あ・・・
さっき抱えたこの記憶は
私の記憶じゃないんだ・・・

すこし震えるほどに自覚した

【町になりたい】それは言葉としては
以前から使っていたしそう思ってた

町になってるってこういうことなんだ
ってことに はじめてあたった

そうしたらこの体で抱いたこの記憶すらも、
それは自分の記憶じゃなくて町の記憶で
だけれどここに入っている


ああ・・・それで
この先どこへいくんだろう

しずかにこの町で目をとじた



by a-avenue | 2013-01-26 23:00 | まちの人と

手回しオルガンの木の音色 まちからここから www.temawashi.org
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